岩 崎 元 郎 の


「知恵」



 2月の知恵 5本指手袋よりミトン
 


 
 
手の指とか、足の指とか、身体の先端まで、酸素をたくさん含んだ新鮮な血液は届き難い。雪山で、凍症になり易い部位だ。若い頃、正月の南アルプス赤石岳で、右手人差し指を凍症にやられた。3人パーティー2組6人で北壁を攀じた。実際は壁ではなく、稜なのでさほど難しい登攀ではなかった。ぼくらの組が最初に抜けて、山頂の避難小屋に入った。ぼくは次の組が心配で、吹きっさらしの山頂で彼らが上がってくるのを待った。1時間くらいして、彼らは赤石岳の山頂に登り着いた。

 ぼくらの組は、荒川三山を縦走して椹島に下る計画なので、この日荒川小屋まで入っておきたかった。2組は聖岳に縦走する計画なので、山頂避難小屋泊。避難小屋で一息ついて、ぼくらは荒川小屋めざして赤石岳を下り始めた。寒気はさらに増し、風雪はさらに激しくなった。昭和山岳会育ちのぼくは、全天候行動に慣れていて行動できない天気ではなかったが、ピッケルを握る右手の中指が真っ白になった。ちょっとヤバイなと思ったぼくは、2人の仲間に状況を説明して避難小屋に引き返した。

 翌朝、ぼくの中指の先は大きな水泡ができ、ツメが押しはがされて上を向いていた。ピッケルを握れる状態ではない。大聖寺平から小渋川を下ることにして、赤石岳山頂避難小屋をでる。きのうとはうって変わって、無風快晴だ。ぼくはピッケルを小脇に抱え、赤石岳を下っていった。帰宅して医者にいったら、麻酔も打ってくれず、上を向いたツメをペンチでつかんで、グイっと引き抜かれた。痛いのなんのって・・・。

 前置きが長くなったが、5本指の手袋よりミトンのほうが、暖かい。最近、登山用具専門店でもミトンをみないが、ロープを使うことのない初心者の雪山登山なら、手袋はミトンがお勧めである。アイゼンをはいたりするときは、ミトンはやりづらいから、保温用には5本指の手袋でいいが、オーバー手袋は絶対にミトンタイプがいい。

 5本指のオーバー手袋がなかなかはめられないでいる人を、何人も見ている。



   


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