008. ティッシュ配りに一喜一憂
大塚駅前の都電の線路の近くで、ティッシュを配っている。タダで貰えるものは、なんでも貰ってしまうし、なんだかトクした気分になる。貰えないとなんとなくがっかりする。
そこを通りかかったとき、ティッシュを貰えるか貰えないかでその日の吉凶を占うことにしている。名付けてティッシュ占い。貰えれば吉で、貰えなければ凶だ。貰えるときはどうっていうことないのだが、貰えなかったときのタイミングが、実は面白い。
あと一歩で彼女からティッシュを手渡されるその時、彼女はくるっと反対側に向いて、そちら側の流れにティッシュを渡し始める。ぼくは貰えない。
あと一歩のところで、彼女の手持ちのティッシュがなくなり、彼女はダンボール箱に入っているティッシュを取りにいく。ぼくは貰えない。
ぼくの前をおばあちゃんが歩いている。次はぼくの番だ、と思っているのに、ティッシュを貰ったおばあちゃんが立ち停まり、もっとたくさん欲しいとティッシュをねだっている。流れがあるから立ち停まれないぼくは、おばあちゃんの後ろを通り過ぎて駅に向かうしかない。ぼくは貰えない。
貰えないと凶だ。と意識してぼくは兜の緒を締める。おかげで凶事は発生しない。貰えると吉だ。流れに停滞がない。しかし、停滞がない分、意識に欠ける。持って出たカサを置き忘れてくるなんて、こんな日だ。
吉は凶にして凶は吉、占いの吉凶なんてそんなもんだろう。ティッシュを配っている方には感謝大である。