岩 崎 元 郎 の


 

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小野岳と湯野上温泉
 
 昔々、まっとうなサラリーマンだった頃、会津若松に出張があった。このチャンスを逃す手はない。前々から一度訪ねてみたいと思っていた大内宿に帰路立ち寄る計画を立てた。会津西街道の旧道に残る宿場町、わらぶき屋根が連なる集落だ。大内宿立ち寄りをきめてガイドブックをひらくと、最寄りの駅が湯野上温泉であることを知る。大内宿を見守るように盛り上がっている山が東側にある、小野岳だ。よし、小野岳にも登ろうときめた。

 二十代後半、小遣いは潤沢ではないので湯野上温泉駅にステーション・ビバーク。ビバークとは野宿することだ。駅の待合室や軒下で野宿するのが、ステーション・ビバーク。実際は一人用テントを持って行っていたので、駅前の駐車場の片隅にテントを張り、お湯を沸かしてカップラーメンを作り、それを肴にささやかな宴のひとときを過ごした。山が好きで良かったなあと思いながら、ほろ酔い気分でシュラフに潜り込む。明るくなると同時にシュラフから抜け出し、テントを畳む。小野岳目指して出発。

 いい加減に歩いていたのだろうか。気が付いたらコースをはずしていた。道が無いわけではないのだが、踏み跡程度、ほとんど真っ直ぐに山頂に向かっている。だから急登である。一般コースがこんな急登であるわけがない。いまさら戻るのも面倒だったので、急登を登り切って小野岳頂上に立ち、大内宿に下り、わらぶき屋根が連なる光景に感動して帰京した。とはいうものの、コースをはずしてしまったことに納得できず、後日再訪した。小野観音堂の先に小野岳登山口がある。急斜面だが登山道はジグザグに付けられていて登りやすい。湯野上温泉駅から登山口まで50分、さらに1時間50分で山頂に立つ。自分がどこでコースをはずしたのか、見当も付かなかった。このときは下って大内宿に泊まった。

 大内宿のたたずまいがすっかり気に入って、このあたりに通うようになった。「南会津」という呼ばれ方もいい。数年前の春、このときは大内宿でネギそばを食べ、湯野上温泉まで下って泊まった。大内宿もいいが、温泉もいい。このところのぼくの活動は、アルパインツアーに企画実施をお願いしている「地球を遠足」で海外の山旅がメインになっているが、このあたりの山々にもまた足をのばしてみるか、なんてことを考えている。明神ヶ岳・志津倉山・博士山の三山が頭に浮かんだ。

 まず志津倉山に登ってみたい。数多くの伝説を秘めた山である。その一つに「猫啼岩には齢1000年を経たカシャ猫が棲み、葬式のときに死体をさらいに来るという」。聞くだけで鳥肌が立つし、わくわくもする。ブナの山なので5月の新緑と、10月の紅葉がいいはず。今年の5月はもう手が届かないから、10月、志津倉山に登りにこよう。

 湯野上温泉は源泉が七ヶ所あり、地域の一般家庭にも給湯しているくらいに湯量の豊富な温泉ということだ。明治時代の中期に、猿が入湯しているところを発見、開湯されたという。源泉名の一つに猿湯がある。泉質は弱アルカリ単純泉、神経痛・筋肉痛・関節痛・慢性消化器病に効き、マイナスイオン濃度も高く、体の芯から温まるとPRされている。

                                                          2013.7.16 記





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