岩 崎 元 郎 の


 

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燕岳と中房温泉
 
 
「あっあ、ちょっと待って、その扉開けないで下さい」

 餓鬼岳から燕岳を縦走したときのこと。まだ夜行列車が走っていたんだから、随分昔の話しになる。信濃常盤駅で下車、メンバーは8人なのに一人足りない。マゴマゴしていると、運転手さんがタクシーから降りてきて、「今、会社から無線が入ったよ。一人寝過ごしちゃって大町まで行ってしまったんだって、タクシーでこっちに向かっているから待っていてくれと・・・」。7人は大笑い。

 タクシーが目の前に停まり、Oさんがころがるように降りてきた。「すみません」「ドンマイ、ドンマイ」。登山口までタクシーで入り、この日は餓鬼岳小屋泊。二日目は、燕岳を越えて燕山荘。三日目、合戦尾根を下る。下ったところが中房温泉。汗を流しに立ち寄る。中高年登山のお約束だ。参加者6人は女性、サブリーダーも女性だったので、今回男はぼく一人。

 中房温泉は単純硫黄泉、湧出量が多く浴場が数多い。ウィキペディアには、「内湯外湯をあわせて16箇所の浴場が存在し、一泊で全てを巡るのは大変なほどである」とある。男女別浴場もあるが混浴が多い。その時のぼくは経験不足で、男女別なのか混浴なのか判別できなかった。よさげな浴場を見つけ、脱衣場に入って裸になった。扉を開け浴場に入る。

 時間が早かったのか、広い浴場は誰もいない。わー気持ちいいと背伸びをし、何気なく浴場内を見回すともう一つ出入りできる扉があった。人影があり、声が聞こえる。やべえ、うちのご婦人方だ。思わずぼくは大声を上げた。

 「あっあ、ちょっと待って、その扉開けないで下さい」。彼女たちとの混浴は間一髪で止めることはできたが、冷や汗がどっと流れた。中房温泉は燕岳登山口にある一軒宿、秘湯と言っていい。ぼくにとって忘れられない温泉宿になっている。

 NHK教育テレビ番組「中高年のための登山学」で表銀座コースを取り上げた。生徒さん役は山内賢さん。前日は中房温泉の湯舟に手足を伸ばして鋭気を養った。

 さて、燕岳。餓鬼岳から縦走してくれば中級コース、大天井岳を越え槍ヶ岳を目指す表銀座コースは上級、大天井岳から左折して常念岳、蝶ヶ岳は中級コースで、槍穂の展望台になっている。そんなに欲張らず、中房温泉から往復登山にするなら、燕岳は初心者にも無理なく楽しめる北アルプスの入門の山だ。

 から8月上旬だ。登路は北アルプス三大急登として知られる合戦尾根。三大急登と聞いてビビル初心者もいるが、よく整備されていて登り易い尾根である。第一ベンチ、第二ベンチ、第三ベンチ、富士見ベンチと、休憩場所もしっかり用意されている。この上に合戦小屋があって、名物のスイカを売っている旨い。

 この先は展望も開けて、アルプス登山を堪能しているうちに燕山荘に到着だ。登山口から合戦小屋まで3時間、スイカを食べてから1時間で燕山荘だ。山荘から山頂までは登り30分、下り25分。山荘から中房温泉までは、下り2時間50分。

                                                          2013.8.15 記





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