岩 崎 元 郎 の


 
   
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那須岳と三斗小屋温泉

 那須岳というのは、一つの峰に与えられた名ではない。那須五岳と称せられる山々がある。黒尾谷山、南月山、茶臼岳、朝日岳、三本槍岳の五岳。「その中枢部の茶臼、朝日、三本槍を、所謂那須岳と見なしていいだろう」、深田久弥さんは『日本百名山』の「那須岳」の項で、そのように述べられている。『日本百名山』というのが、なかなか曲者である。明文化された「日本百名山登山ルール」、というものは見たことはないが、チラチラと垣間見える気がするのは、ぼく一人ではあるまい。この「日本百名山登山ルール」、曲者であろう。

 雌阿寒岳に立って、日本百名山完登と快哉を叫んだAさん、たちまちイチャモンがついた。深田さんは『百名山』の後記に、「本書にあげた百の名山は、私は全部その頂上に立った」と述べられている。だから、とイチャモン氏はいう。百名山に取り上げられているのは「阿寒岳」であるが、阿寒岳という山はない。あるのは、雌阿寒岳と雄阿寒岳である。深田さんが阿寒岳をめざしたときは、爆発の危険ありとして雌阿寒岳は登山禁止だったので、雄阿寒岳に登られた。雌阿寒岳には登っていないのだから、百名山の阿寒岳は雄阿寒岳である、雌阿寒岳に登ったのでは「阿寒岳」に登ったことにはならない、というのがイチャモン氏の主張であった。

 富士山や槍ヶ岳は登るべきピークが明快だが、百名山の中には登るべきピークが不明快な山がいくつかある。例えば大雪山、大雪山はピーク名ではなく旭岳を中心とする火山群の総称である。しかし、大雪の場合は山名の下のカッコの中に標高が2,290mと記されていて、その標高の山は旭岳と同定できる。しかし、阿寒岳の場合はカッコ内に記されている標高は1,503m(現在では1,499m)、この数字が示すピークは雌阿寒岳である。Aさんが「阿寒岳」を雌阿寒岳としたのも無理からぬ話ではあるのだ。

 冒頭紹介したように那須岳も一つのピーク名ではない。茶臼、朝日、三本槍を那須岳とみなすと、深田さんは述べられているが、カッコ内は1,917mとあって、この数字は三本槍を示している。多くの百名山登山マニアは、三本槍に立って善しとしているようだ。ぼくの登り方はこうだ。ロープウェイを利して茶臼岳に立ち、峰の茶屋跡から三斗小屋温泉に下って一泊、翌日隠居倉の方から回って朝日岳に登り、三本槍にも立って北湯に下る。一泊二日で茶臼、朝日、三本槍に立つ。誰からもイチャモンをつけられない仕上がりと自負している。

 那須火山帯という言葉があるくらいだから、那須岳周辺には温泉が多い。コース途上にある三斗小屋温泉を筆頭に那須湯本温泉、新那須温泉、高雄温泉、大丸温泉、弁天温泉、北温泉、甲子温泉、板室温泉・・・。一押し二押しは、三斗小屋温泉の煙草屋であり大黒屋である。強風で有名な茶臼岳と朝日岳の鞍部、峰ノ茶屋跡から小一時間下ると建物が見えてくる。右手に煙草屋、すぐ先に大黒屋がある。露天風呂に入りたいむきは煙草屋に宿泊、大黒屋の方には露天風呂はないが落ち着いた雰囲気がある。ぼくはどちらにも泊まっているが、甲乙つけ難い。露天風呂は一つだが女性専用時間が設けられているので心配無用。

                                                           2016.3.15 記

 




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