岩 崎 元 郎 の


 
   
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蔦七沼と蔦温泉

 八甲田山周辺は、温泉のメッカといっても過言ではない。八甲田大岳の登山口に位置する酸ヶ湯を筆頭に、八甲田ロープウェイ乗り場近くにある寒水沢温泉、赤倉岳北面に位置する深沢温泉、その東隣、田代平の西横にある八甲田温泉、酸ヶ湯西隣の城ヶ倉温泉、高田大岳西側登山口にある谷地温泉、南八甲田の登山口に位置する猿倉温泉は谷地温泉の西隣。猿倉温泉の南東側に蔦七沼が点在し、蔦温泉がある。その南東には十和田湖温泉郷が控えている。

 若い頃、年寄り連中は温泉、温泉って騒ぐけど、温泉のどこがいいのか不思議でならなかった。それがいま自分が温泉、温泉と騒いでいる。自宅の風呂と温泉とでは、疲れの抜け方がまるっきり違うことに気付かされたのは何年前になるだろうか、いずれにせよ自分も年寄りになったということだろう。

 八甲田山周辺の温泉は、いずれアヤメかカキツバタである。ここで蔦温泉を取り上げるのは、だれにでも無理なく歩けて歩き甲斐あるハイキングコース、蔦七沼がそこにあるからだ。蔦温泉ももちろん魅力だが、なんといっても十和田湖樹海と呼ばれているブナの原生林の中に点在する蔦七沼がぼくのお気に入りなのである。蔦七沼とは、赤沼、蔦沼、鏡沼、月沼、長沼、菅沼、瓢箪沼の七つだが、一つだけ大きく離れている赤沼を除いた六沼をめぐるハイキングが一般的だ。一周約3㎞、ハードな登下降のない1時間くらいのお散歩。ちょっと語呂が悪いが、ぼくたちは蔦六沼と呼んで楽しく歩いている。

 青森駅始発のバスが新青森駅で新幹線利用の客を拾い、ロープウェイ乗り場から城ヶ倉温泉、酸ヶ湯、猿倉温泉、谷地温泉、蔦温泉を経て十和田湖温泉郷へと走っている。蔦温泉へはこのバスを利用する。蔦温泉に5名以上で宿泊する場合は、宿が送迎バスを出してくれるようだ。

 蔦温泉は蔦七沼同様、ブナの原生林の中にたたずむ一軒宿。泉質は、ナトリウム硫酸塩・炭酸水素塩-塩化物泉。神経痛、リュウマチ、動脈硬化症、疲労回復などに効能がある。発見は1174年とガイドブックには紹介されていた。浴槽はブナ材、浴槽の床板のすき間から絶え間なく源泉が湧出している魅力的な温泉である。

 1993年からぼくは、日通旅行大宮支店との共催で「5年間で完登をめざす日本百壱名山登山教室」をスタートさせ、八甲田山荘にも泊まることになった。おかげで、当時オーナーだった芦沢吉朗氏と親しくお付き合いできるようになった。蔦六沼も芦沢さんのご案内で初めて歩いた。小一時間のハイキングで汗をかくこともなかったが、「いい湯ですよ」と芦沢さんに声かけられて、蔦温泉に立ち寄った。加齢に従って、温泉の魅力・効能をしみじみ感じる昨今だが、蔦温泉は湯舟に浸かって源泉が底からわき上がってくる様を眺めていると、いつまでも立ち上がることなくその様を眺めていたいと思わせる、居心地のいい温泉であった。

 先日新ハイキング社から『古城址ハイキング』が送られてきた。内田栄一さんの労作である。ハードな登下降がないので、体力・脚力の低下してきたハイキング好きには、格好のガイドブックだと思った。


                                                       2016.10.15 記




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