岩 崎 元 郎 の


 
   
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五頭山と出湯温泉

 五頭山といっても知る人は少なかった山が、ゴールデンウィーク(2018年)の遭難事故で全国にその名を知られることになった。名は知られたが、新潟県のどのあたりにあって、どんな山なのか知る人は少なかろう。ぼくが五頭山を知ったのは、「新ハイキング」誌で出会った案内記事のおかげである。「新ハイキング」というのは新ハイキングクラブの会誌ということだが、興味深い情報満載の貴重な雑誌だった。マイナーな山の紹介記事が多く、五頭山もその一つ。なぜかぼくは五頭山に引っかかった。

 この山は、新潟市の東側に位置する。海岸線から広がる平野部が終わって、ここから山が始まるという最初の山だ。列島の背骨ともいうべき大山脈の一つ、飯豊連峰の前衛峰が二王子山、その前衛が五頭山、その先で山並みは新潟平野に沈む、という説明の仕方もある。

 南側から宝珠山559m、菱ヶ岳973.5m、五頭山912.5m、松平山954mと連なる峰々の看板になっている。標高が低い割には、東京からの交通費が高い山ということになるが、コースは変化に富んでいて歩き甲斐がある。麓には五頭温泉郷と呼ばれる村杉、今板、出湯という温泉があるのも魅力だ。日帰りの山だが、東京起点で考えれば麓で一泊せざるをえない。出湯温泉に一泊し、五頭山に登るコースを紹介しよう。とはいうものの、20年前の記憶と記録に頼る案内なので、行きたいと思われる方は、最新のガイドブックでコース状況をチェックして欲しい。

 温泉へはJR羽越本線水原駅からバスで30分、バスがないときは宿泊を予約しておけば宿が送迎してくれるだろう。温泉入り口にある石柱が五頭山登山口を示している。その道を辿ってやまびこ通りに出、砂郷沢橋まで行く。沢沿いの林道のどんづまりで左岸に渡ると山道になる。烏帽子岩を過ぎ、村杉温泉からの道を合わせると、いよいよ急登となって五ノ峰に導かれる。四、三、二、一ノ峰と続く五つの峰が、五頭山の山名に由縁になっているようだ。

 一ノ峰はいかにも山頂らしい山頂で、展望もよく、雰囲気もいい。一ノ峰からひと登りすると、五頭山と菱ヶ岳を結ぶ主稜線上に出る。左へ一投足で五頭山頂上、三角点はあるが樹林の中で眺望はない。さて、この先どうするか。体力と時間に余裕があれば、松平山まで足を伸ばす。五頭山まででよしとして、往路を引き返す。松平山とは反対側、菱ヶ岳にむかうなどの選択肢がある。そのとき、ぼくらは松平山にむかったが、沢の源頭部になる雪面のトラバースはスリップの危険があり、ロープをフィックスしたりして通過には安全を期した。10時間近い行動と緊張感のおかげで、充実した一日となった。下山しての温泉入浴は、最高のご褒美であった。

 出湯温泉の開湯は809年、空海が錫杖を突いて湧出させたという伝説がある。新潟県内で最も古い歴史ある温泉だ。泉質はアルカリ性単純泉、アトピー性皮膚炎に効果ある温泉として知られている。旅館は現在7軒、共同浴場が2ヶ所ある。松平山から下って、お世話になったのは「旅館弓月」。五頭山に通うことになったのは、山の魅力もさることながら、この宿のおばあちゃんの人柄に惹かれてのことだった。

                                                       2018.7.15 記



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