岩 崎 元 郎 の


 
   
 山と温泉トップページへ戻る   

赤牛岳と湯俣温泉

 旧い山仲間から残暑見舞いが届いた。大学時代のサークル仲間と誘い合って、四人で赤牛岳に登り、読売新道を歩いてきたとのこと。永い間憧れていたという赤牛岳の頂きに立った喜びが、文面から熱く伝わってきた。ぼく自身も憧れ、だいぶ以前に登っている。

 赤牛岳は山好きのだれもが、心惹かれる山だ。北アルプスといえば最初に名前が挙がるのは槍ヶ岳か、穂高岳、剱岳を押す人もいよう。白馬岳、鹿島槍ヶ岳、薬師岳、笠ヶ岳、常念岳、燕岳・・・、北アルプスで気になる山といえば、枚挙にいとまがない。しかし、いま名前を挙げた山々はいずれも主脈上に位置する。もちろん主だった山々は主脈上に位置する。主脈である由縁だ。主だった山々は主脈上に位置するが、主脈からはずれたところに心惹かれる山がある。北アルプスのそれが、赤牛岳だ。中央アルプスでは三ノ沢岳、南アルプスでは蝙蝠岳、奥秩父では和名倉山・・・。主脈からはずれたところに登り甲斐のありそうな山を探し出すのは、地図読みの楽しみのひとつであろう。

 閑話休題。赤牛岳は北アルプスのほぼ中央に位置している。冒頭の友人たちはブナタテ尾根を登って裏銀座コースを辿り、水晶小屋から読売新道に入り、水晶岳を越えて赤牛岳に立った。読売新道は水晶小屋から北に派生、黒部川本流・上ノ廊下と東沢谷を分水する長大な尾根上に拓かれた魅力的なコースである。

 裏銀座コースを何度か歩いて入るぼくは、赤牛岳をプランするに際し湯俣から竹村新道を登ってみることを思いついた。昭和38年年末から39年年始にかけての、当時所属していた昭和山岳会の冬山合宿は、「北鎌尾根と硫黄尾根からの槍ヶ岳集中登山」だった。ベースキャンプは湯俣に置かれた。新人だったぼくは葛温泉から湯俣、湯俣からC1を設営したP2上までの荷上げに終始した2週間だった。貴重な経験をさせて貰ったと思っている。川原に石囲いを作り、川の中から湧く温泉を引き込んで作った、マイ温泉に浸かったことが懐かしい思い出になっている。

 赤牛岳に登ったときは、湯俣温泉晴嵐荘に泊まった。宿の内湯は川原に作ったマイ温泉とは、浸かり心地に雲泥の差があった。泉質は単純硫化水素泉、泉温は42℃ほどという。心臓弁膜症や関節、筋肉の慢性リューマチに効能がある。

 先日(18年10月1日)ふと、「アウトドア・イン」という言葉を思いついた。山頂をめざすのではなく、岩登りや沢登りにチャレンジするのでもなく、アウトドア=大自然の真っ只中にただいるだけ。それが素晴らしい癒しになるはずだ、ということに気がついたのだ。高瀬ダムから3時間半歩かねばならないが、平らな道だし・・・。湯俣温泉は「アウトドア・イン」お勧めの場所になるに違いない。

 翌日は竹村新道を登って水晶小屋泊。3日目、何回か登っている水晶岳に立つ。この先は初めて踏みしめるコースだ。ガイドブックには3時間と書いてあるが、赤牛岳までは長い。2864.2mを足下にしたときは、メンバー全員から歓声が上がった。喜びも束の間、今宵の宿、奥黒部ヒュッテまではウンザリするほど長かった。

                                                  2018.10.15 記



 Copyrighit(C)2008-2018 Motoo-Iwasaki
許可無く、他ヘの転載、掲載を固くお断りします